コラム

【消費税】軽減税率の会計処理と区分記載がない請求書等を受領した際の対処


軽減税率の導入に伴い、消費税課税事業者(簡易課税適用事業者は除く)は、仕入税額控除を受ける要件として「区分記載請求書等保存方式」による会計処理が要求されることとなりました。

しかしながら、軽減税率対象の取引があるはずなのにその記載がない請求書や領収書を受け取ることがあり、経理処理に困ってしまうことが多々あります。

そこで今回は、区分記載請求書等保存方式の基本的な会計処理と、標準税率と軽減税率の区分がされていない請求書等を受領した際の対処方法について解説します。

インボイス制度開始にあたってインボイス制度開始後の対応事項と負担軽減措置をまとめた記事を掲載しましたので是非ご覧下さい。「【消費税】最低限知っておきたいインボイス制度開始後の対応と負担軽減措置について」(2023/7/20追記)

POINT

  • 10%と8%の課税取引が混在する場合、税率毎に区分して会計処理する必要がある
  • 軽減税率の対象かどうか明記されていない請求書等を受領した場合は、受領者が追記できる
  • 10%と8%の内訳が不明な場合は、計算式により各税率の対象金額を算出する

1.区分記載請求書等保存方式の概要

区分記載請求書等保存方式とは、仕入や物品の購入取引が軽減税率対象かどうか明示された請求書や領収書(区分記載請求書等)の保存と、それに基づいた税率毎の区分経理を要求するものです。

飲食店を前提として、下記のような請求書を受領した場合の経理方法は次のようになります。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 消費税の処理
仕入高
消耗品費
10,800
11,000
買掛金
21,800
軽減仕入(8%)
標準仕入(10%)

※8%対象は全て食材仕入、10%対象は全て消耗品等

2.税率毎の区分記載がない請求書等を受領した際の対処

全ての請求書等がきちんと区分記載されていればいいのですが、この区分記載請求書等の様式に対応できていない請求書や領収書が数多く見受けられ、軽減税率の対象があるにも関わらず明記されていないことがあります。

このような請求書等を受領した場合、取引事実に基づいて請求書等に受領者が追記することが認められていますが、取引が軽減税率対象だけと分かっていればまだしも、標準税率と軽減税率が混在する取引では、明細などが添付され何にいくら払ったかが分かるような状態でない限り、受領者が標準税率と軽減税率の金額を区分することができません。

そんな時は計算式を使って標準税率と軽減税率の各対象金額を算出しましょう。

標準税率の税抜金額合計をXとした場合、下記の計算式で求めることができます。

〔1.1X + 1.08( 税抜金額合計 – X ) = 税込金額合計〕

請求書等に記載の税込金額合計が87,000円、税抜金額合計が80,000円だった場合、上記式で計算すると以下のような流れになります。

  • 1.1X + 1.08(80,000 – X)= 87,000
  • 0.02X=600
  • X=30,000 ⇒ 標準税率税抜価額…①
  • 税抜金額合計 – ①=50,000(軽減税率税抜価額)

以上のように、税率毎に金額が区分されていなくても計算式により算出することができます。

残念ながら最低限税込金額と税抜金額が分からなければ算出不能になってしまうため、その場合は請求書等発行者に区分記載した請求書を依頼するしかないでしょう。

まとめ

手書の領収書を使用している小規模な事業者や、食品の卸売業者の請求書でさえも区分記載がないケースが少なからず存在します。

このようなケースが多い場合はエクセルで数式を作って、手軽に計算できるようにしてもいいかもしれません。

当事務所でも税込価額と税抜価額を入力するだけで税率毎の金額を算出できるツールを作成しておりますので、お問い合わせいただければ無料でご提供いたします。

軽減税率が導入されてまだ1年経っていませんが、納税に掛かる社会全体のコストを考えると単一税率で良かったのではないかと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。 内容についてご不明点等ございましたらお問い合わせフォームよりお問い合わせください。