コラム

所得税の青色申告に必要な手続き・メリットまとめ

所得税の確定申告には青色申告白色申告があります。

簡単なイメージとしては、青色申告は経理方法が若干複雑になる代わりに税金が安くなり、白色申告は経理方法が簡単な代わりに税金が安くならないというところです。

以前まで白色申告は帳簿の作成と保存が義務ではありませんでしたが、現在では白色申告であってもそれが義務となっており、また安価で利用できる会計ソフトの普及により青色申告と比べて手間もそれほど変わらなくなってしまったため、白色申告を選択する理由はないといっても過言ではありません。

そこで今回は、所得税の青色申告に必要な手続きとメリットのまとめをご紹介します。

POINT

  • 青色申告が適用できるのは事業所得、不動産所得がある人
  • 青色申告には税額を安くするメリットがたくさんある
  • 適用するには期限内に青色申告承認申請書の提出が必要

1. 青色申告が適用できる人

青色申告の対象になる所得の種類は、不動産所得事業所得山林所得です。

1-1. 事業所得か雑所得かの判断

個人事業主として専業で事業を営んでいる場合は、余程のことがない限り事業所得として認められますが、給与所得などの他の所得も得つつ副業的に事業の所得を得ている場合には、それが事業所得なのか雑所得なのかを判断する必要があります。

雑所得の場合、そもそも青色申告は対象外であり、赤字になった場合他の所得と相殺(損益通算)することもできないため、ここでの判定は税額に大きく影響します。

判定基準

  1. 自己の計算と危険において独立して営まれているか(リスクを負っているか)
  2. 営利性と有償性があるか
  3. 反復継続性があるか
  4. 事業としての社会的地位が客観的に認められるか

上記の基準を総合的に勘案して判断しますが、平たくいうと、労力やコストをかけて、継続的に得た収入が生活の基盤になっているかどうかということです。

この判断は国税庁と争いになるほど難しいものであるため、迷った場合には税理士に相談することをおすすめします。

1-2. 不動産所得の事業的規模の判断

不動産所得の場合も、上記と似たような「事業的規模」かどうかの判断が必要になります。

青色申告の適用自体には影響しませんが、65万円控除か10万円控除か、また専従者給与が認められるかどうかの違いがでてきます。

形式的な判定基準

  • 独立家屋の場合、5棟以上の貸付を行っているか
  • 集合住宅の場合、10室以上の貸付を行っているか
  • 駐車場の場合、50台分以上貸付を行っているか

複数種類の貸付を行っている場合、1棟=1、1室=0.5、1台=0.1に換算して5以上であれば事業的規模とされるようです

上記のいずれかでも満たしていれば、原則として事業的規模と認められますが、これに満たない場合でも1-1で紹介した判定基準を満たしていれば事業的規模と認められます。

2. 青色申告のメリット

青色申告によるメリットは下記のとおりです。

  1. 青色申告特別控除65万円(簡易簿記は10万円)が適用できる
  2. 専従者給与が原則全額経費にできる
  3. 純損失が3年間繰越控除できる
  4. 純損失の繰戻還付ができる
  5. 30万円未満の減価償却資産を取得した時に全額経費にできる(少額減価償却資産の特例)
  6. 貸倒引当金が設定できる
  7. 前々年分の不動産所得と事業所得の合計が300万円以下の場合現金主義による計算ができる
  8. 調査に基づかない推計課税の更正を受けない
  9. 更正の通知があった場合、異議申し立てか、直接審査請求を選択できる
  10. 棚卸資産の低価法が適用できる
  11. 租税特別措置法各種の適用が受けられる

主に税額に影響してくるのは1~5まででしょうか。

1の青色申告特別控除は利益から最大65万円控除して税額を計算できる制度です。
例えば65万円控除を受けた場合に、税率が30%だったとすると20万円近く税額が変わることになります。

2の専従者給与は、配偶者などで専ら事業に従事している人の給与を経費に計上できるもので、不当に高額な給与でなければ全額経費にできます。
所得税は累進課税であるため、1人に所得が集中してしまうと高い税率が適用されてしまいますが、これにより所得を分散することができます。

3と4の純損失の繰越控除及び繰戻還付は赤字が出た場合に、他の年度の所得と相殺できる制度です。

5の少額減価償却資産の特例は30万円未満の減価償却資産を購入した際に、一時に経費にできる制度です。

2-1. 青色申告特別控除の65万円控除の要件について

青色申告特別控除の65万円控除をするためには、青色申告をしているだけでなく、一定の要件を満たす必要があります。

更に2020年分(令和2年分)以降の確定申告からは、新たに電子申告又は電子帳簿保存の要件が加えられることになり、追加要件を満たさない場合控除額が55万円に減額されてしまうため注意が必要です。

65万円控除の要件

  1. 複式簿記による記帳
  2. 申告書に貸借対照表と損益計算書を添付
  3. 期限内申告(毎年3月15日)
  4. 電子申告又は電子帳簿保存(2020年分以降追加)

複式簿記というのは、例えば1万円売り上げて現金入金があった場合、売上高の発生と現金の増加の両方を記録する方法で、反対に単式簿記というものがありますが、これは売上高があったことのみ記録する方法です。
複式簿記は複雑に思えるかもしれませんが、最近の会計ソフトでは知識が無くても簡単に経理処理が行えるように工夫してあるのでそこまで難しいものではありません。

要件4はどちらかを満たしていれば問題ありませんが、電子帳簿保存は事前の申請が必要になるため電子申告の方が無難かもしれません。

3. 青色申告に必要な手続き

青色申告をするためには、「所得税の青色申告承認申請書」を提出期限内に納税地を管轄する税務署に提出する必要があります。

新規開業にあたっては他にも提出する届出書があるのでまとめて下表に記載します。

≪新規開業時の主な届出一覧≫

届出書名称 提出期限 備考
個人事業の開廃業等届出書 事業開始等の日から1か月以内
所得税の青色申告承認申請書 承認を受けようとする課税期間の3月15日まで
(1月16日以後に開業した場合は、2か月以内)
青色事業専従者給与に関する届出書 青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする課税期間の3月15日まで
(1月16日以後開業した場合や新たに事業専従者を有することとなった場合は、その日から2か月以内)
専従者がいる場合
所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書 その年分の確定申告期限まで 法定による方法以外を選択する場合
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 随時
(申請の翌々月の納付分からこの特例が適用)
給与支給人数10人未満で適用を受ける場合
消費税課税事業者選択届出書 選択しようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間等である場合には、その適用を受けようとする課税期間中 消費税還付が受けられる場合

※届出書名をクリックすると書式PDFが掲載された国税庁のページを参照できます。

各種届出書の記載方法は国税庁のページで確認できますし、記載例などを検索すれば詳しく解説されていますのでご参照ください。

上記の申請に関わらず全ての税務上の申告・申請手続に言えることですが、税務署に提出する際には必ず提出用と控用の2通を同封し、返信用の封筒を入れて必ず控えを入手保管するようにしてください。
提出したつもりが受理されていなかったというトラブルが少なからずあるようですので、いざというときの証拠になります。

まとめ

今回は所得税の青色申告のメリットと適用を受けるための手続きについてご紹介しました。

青色申告は税額が安くなるメリットがありますし、会計ソフトを利用すれば適用が難しいものではありません。

例え会計処理が自分でできず税理士に依頼したとしても、税理士費用以上の節税効果も見込めます。

新規開業の際には必ず届出書を提出し、適用を受けられるようにしましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。 内容についてご不明点等ございましたらお問い合わせフォームよりお問い合わせください。