コラム
起業を考えたときにすべきこととは?起業前の準備の流れを時系列で解説《後編》
千代田区水道橋の牛久会計事務所です。
『起業を考えたときにすべきこととは?起業前の準備の流れを時系列で解説』の後編です。
前編はこちらをご覧下さい。
後編では、主に起業前にする組織の体制整備について焦点を当て解説していきます。
目次の見出しは前編から継続
目次
3. 企業形態を検討する(起業の2ヶ月前までに)
企業形態の選択については、詳細に触れると記事のボリュームが多くなってしまうため、簡単に概要だけ触れます。
企業形態はまず、人格の違いから個人事業主と法人に分かれており、この時点で法規制、税制、社会保険制度、社会的信用等が大きく異なります。
企業形態の選択は、起業後の事業運営に大きく影響するものですので慎重に検討しましょう。
例えば、事業における仕入は掛け取引が中心になりますが、売る側にとっては支払う能力がない相手には販売しないのは当然なので、創業当初の個人で信用力が低い場合、仕入自体できない事態になりかねません。
3-1. 企業形態の比較
以下の表に、主な検討対象となってくる「株式会社」「合同会社」「個人事業主」の違いをまとめます。
形態 | 株式会社 | 合同会社 | 個人事業主 | 備考 |
---|---|---|---|---|
設立手続 | 定款作成・認証と法人登記 | 定款作成と法人登記 | 不要 | 税務署、自治体への届出は全ての形態で発生 |
設立コスト | 約20万円 | 約6万円 | 0円 | 設立コストは電子定款による場合 |
設立期間目安 | 3~4週間程度 | 2~3週間程度 | 即日可 | |
信用力 | 高 | 中 | 低 | 資金調達や取引、人材募集に影響します |
税率 (地方税除く) | 一定税率 (15%~23.4%) | 一定税率 (15%~23.4%) | 超過累進税率 5%~45% | 法人の場合利益が無くても均等割り(最低7万円)が毎年発生 |
節税策 | 多い | 多い | 少ない | 社宅、日当、生命保険、繰越欠損金など |
労務事務 | 必要 | 必要 | 従業員を雇用しない場合不要 | 労働保険・社会保険・給与計算など |
社会保険の加入 | 義務 | 義務 | 従業員5人未満の場合加入義務なし | |
役員の任期 | 最長10年 | 無し | 無し | 株式会社の場合任期満了後、住人投棄が必要 |
法務事務 | 会社法に定める手続が必要 | 会社法に定める手続が必要 | 特段無し | 株主総会や役員の選解任など |
ざっくりと個人法人の選択の目安としては、以下のような基準が考えられます。
- 個人資金で運営できる業態か
- 事業拡大を考えているか
- 事業の性質上、信用力が必要か
- BtoCかBtoBか
また、個人の税金は累進税率、法人の税金は一定税率といった違いがあり、利益が大きい場合法人の方が税率が低くなります。
そのため、事業の性質上最初から法人である必要がない場合は、利益が大きくなってきたら法人成りするということも検討すべきでしょう。
個人から法人成りした場合、最大4年間消費税の免税事業者になりますが、この制度を上手く利用すれば、競合他社に比べて収益性を高くすることができ、起業後のスタートダッシュを決めることもできます。
4. 開業場所を検討する(起業の2ヶ月前までに)
SWOT分析で決定した事業コンセプトを参考にして、提供するサービスのニーズに合致するエリアで物件探しを始めます。
例えば、サラリーマン向けの大衆居酒屋を目指すならオフィス街の駅近物件、隠れ家的バーを目指すなら繁華街の路地裏など、ターゲットに合った物件を選ぶ必要があります。
魅力ある地域の物件は、そもそも空くことが少なく、空いたとしてもすぐに埋まってしまうことも多いので早めの行動を心掛けましょう。
5. 広告宣伝やレジシステムなどのビジネスツールを検討する(起業の1ヶ月前~起業後)
事業開始が急がれる場合、必ずしも起業前から準備する必要はありませんが、できるだけ事前に準備する方が好ましいと思われる事項です。
5-1. 広告宣伝ツールの検討
広告宣伝ツールは多種多様ですが、起業にあたって最低限必要なものを列挙しておきます。
ロゴ | ブランディングに必要なロゴには、ロゴタイプ(デザインされたブランド名や社名などの文字)とシンボルマークがあります。 自作することは難しいのでデザイナーに依頼してしまったほうが良いです。 費用目安は3万円~ |
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名刺 | 必須です。名刺印刷サービスを利用すれば簡単な名刺デザインは自作できます。 費用目安は1,000円前後 |
WEBサイト | WEBサイトの有無は、取引先への信用につながります。 こちらは簡単なものであれば独自ドメインとレンタルサーバーがあれば自作することもできます。 自作する手順についてまとめた記事を投稿しました。 独自ドメイン取得とレンタルサーバー併せて年間1万円以内で抑えることもできます |
メールアドレス | Gmailなど無料のものもありますが、独自ドメインのメールを運用したほうが信用力は高いです。 こちらも独自ドメインとレンタルサーバーがあれば運用できます。 独自ドメイン+メール専用サーバーなら年間数千円程度で済みます |
SNS | 近年では集客にSNSを使うことが当たり前になっています。 費用はなく、手間もそれほどかからないので活用しましょう。 |
各種広告宣伝 サービス |
インターネット広告、フリーペーパー、ポスティング広告など幅広くあるので、事業にあったサービスを選びましょう。 費用はピンキリですが数十万円単位でかけないと効果は見込めません |
5-2. 業務システムの検討
事業を行っていく上で必要な業務システムですが、起業後に検討すると最適なものを探すのに時間的に余裕がないことも考えられるため、事前に検討しておいたほうが無難です。
例としては、POSレジ(キャッシュレス決済も併せて検討)、販売管理ソフト、会計ソフト、経費精算システム、請求書システム、給与計算ソフト、勤怠管理システムなどがあります。
業務システムではありませんが、銀行はネットバンキングがおすすめです。
近年では、これらの業務システムについて、導入コストが比較的安価なクラウドサービスが普及してきており、面倒なバックオフィス業務を効率化することもできます。
また、システム導入にあたっては軽減税率対策補助金やIT導入補助金などの補助金が多数ありますので、是非ご活用ください。
まとめ
起業の計画段階から体制整備まで、起業前に必要な準備を2つの記事にわたって解説してきました。
独立して事業を興すのは、これまでのサラリーマン生活に比べて全て自分でやらなくてはいけないため、非常に大変なことだと思います。
ですが、努力と成果が直結するため、やりがいもあり、希望をもって挑んでいける部分もあります。
起業準備において、起業家自身では難しいことがあるかもしれませんが、そんな時は外部の専門家に頼ってみるのはいかがでしょうか。
弊事務所でも、起業サポートに力を入れており、法人設立サービス無償提供や、創業融資サポートなどの業務を取り扱っています。
起業を考えた際は、是非ご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。 内容についてご不明点等ございましたらお問い合わせフォームよりお問い合わせください。