コラム
起業を考えたときにすべきこととは?起業前の準備の流れを時系列で解説《前編》
千代田区水道橋の牛久会計事務所です。
独立・開業を考えたときに、多くの起業家はまず何から始めればいいのか頭を悩ませます。
どんな分野で起業するか、本当にその事業で儲かるのか、どこで開業するのか、資金調達はどうするかなど課題は様々です。
強烈な強みやその時の市場環境が功を奏し勢いで起業が成功することもありますが、準備不足の場合多くは苦しい経営環境に陥ってしまうため、起業前にしっかり準備していくことが起業成功の重要なカギとなってきます。
そこで今回は、“起業までの準備をスムーズに進めるための流れ”について解説していきます。
なお、記事のボリュームが多くなってしまうため2回に分けて投稿することにします。
目次
1. 現状分析して起業する分野を決める(遅くても起業の半年前までに)
起業を考えている方のほとんどは既に起業する分野を決めていると思いますが、飲食店、雑貨屋などのように漠然としたものであるケースも多いと思います。
実際にはそれぞれの分野は細分化されており、さらに優位な事業展開をするためには独自性を持つ必要があります。
それらを具体的に決定していくためにも、しっかりと現状分析をしていくことが必要です。
1-1. 自分のしたいことを考える
これから何をやりたいのか、新しく始める事業にどんな思いを持っているのかを考えます。
検討しておくことで、ブレない経営をするための指針が定まりますし、投資家や金融機関から資金調達する上でも、明確なビジョンを持っている経営者の方が高く評価される傾向があります。
難しく考える必要はないので、経営理念といえるものを考えておきましょう。
1-2. SWOT分析をする
SWOT分析とは自分(自社)にはどんな強み(Strenghts)と弱み(Weaknesses)があって、外部環境にどんな機会(Opportunities)と脅威(Threats)があるかを分析する方法です。
この分析結果をもとに、具体的にどんな経営戦略を立てればいいかの足掛かりがつかめます。
- 「強み」:今までの経験や自分が得意だと思っていることなどから、他人より少しでも優れている知識・技能・人脈・資産などをピックアップします。
- 「弱み」:事業を実際に始めないと具体的に挙げられるものも少ないですが、現状自分の不得意としているものがあればピックアップします。
- 「機会」:SNS・ニュース・起業家仲間の話などの情報源から、社会のニーズや競合他社の状況でビジネスチャンスとなる要素をピックアップします。範囲を広げすぎるときりがないので、ある程度地域を限定するなどするといいでしょう。
- 「脅威」:機会で使用した情報などから、自分がしたいことについて脅威となる要素をピックアップします。
些細なことでもいいので、思いついたことはどんどん挙げていくことがポイントです。
可能であれば、テストマーケティングをして市場の反応を確認できると具体的なイメージがつかめると思います。
列挙された強みや機会の中で、いくつか有望なものを抽出すると、必然的に打ち出すべき独自性なども見えてくると思います。
最終的に強みや機会を組み合わせ、誰に、何を、どのようにして提供するかという事業コンセプトを考えましょう。
1-3. 許認可が必要かどうかを調べる
特定の事業はそれを行うために許認可を必要とする場合があります。
起業する分野がある程度決まってきたら、その分野でどういった許認可が必要か調べます。
場合によっては許認可に時間がかかることもあるので、あらかじめ準備しておく必要があります。
2. 事業計画書や資金計画を作成する(起業の2~3ヶ月前までに)
起業する分野が固まってきたら、次にその事業の計画を具体的な数字に落とし込むために、事業計画書や資金計画を作成します。
2-1. 事業計画書を作成する
これまで分析した情報をもとにして事業計画書を作成していきます。
事業計画書は創業融資や創業補助金を受ける際に作成するものという認識があるかもしれませんが、具体的な経営計画を策定するのにも役立ちますので必ず作成しましょう。
PDCAは様々な場面で使われますが、ここでの意味は事業について「Plan=計画」「Do=実行」「Check=評価」「Act=改善」の行動を繰り返し行い、生産性を向上させる継続的改善手法のことです。
事業計画書はPlanに当たります。このサイクルを実施することによって場当たり的ではない合理的な企業行動をとることが可能になります。
事業計画書は特に定まった様式などはありませんが、創業融資を検討している場合に日本政策金融公庫から提出を求められる「創業計画書」を活用するといいかもしれません。
創業計画書は事業計画書と内容的には近いもので、日本政策金融公庫のWEBサイトで公開されています。
2-2. 資金計画を作成する
事業を実際に稼働させていくためには、主に設備投資資金と運転資金を準備する必要があります。
では具体的にいくら設備投資資金と運転資金が必要になってくるのでしょうか。
この金額設定を誤ると、最悪の場合資金ショートを起こして起業後すぐに廃業に追い込まれるおそれもあります。
このような事態を回避するためにも入念なシミュレーションをして、資金計画を作成していきましょう。
また、資金計画は事業計画書の要素の一つにもなっているため、同時進行で策定していく必要があります。
2-2-1. 必要な資金を決める
事業計画を参考にしながら、起業時に必要な資金額を決定してきます。
設備投資資金については簡単で、必要な設備が決まったら業者に見積もりをしてもらえば金額が算出できます。
注意点としては、できれば複数の業者に見積もりを依頼して交渉することです。
場合によっては、購入だけでなくリースを取り入れることによって初期投資額を抑えることもできます。
事業に必要な資金を獲得するのは想像以上に難しいことなので、できるだけ支出を抑えられるように努力しましょう。
問題は運転資金です。
運転資金とは、事業を運営していくために継続的に必要な、仕入代金・人件費・経費などに充てる資金ですが、実際に事業を開始していなければ具体的にいくら必要なのか把握しづらいのが実情です。
そこで、事業計画書で算定した損益予算を利用します。
損益予算は1年間分の資金収支と概ね一致しますが、業態によっては売上のサイト(入金までの期間)が長期になり仕入のサイトが早期になることも考えられます。
その場合は逆算し資金の動きを調整します。それをもとに事業がある程度軌道に乗るまでの期間分、最低でも半年分以上の運転資金を算出します。
2-2-2. 資金調達の手段を選ぶ
資金調達の方法はネットで検索するだけでもかなりの種類がありますが、起業時の資金調達でポピュラーなのは「自己資金」と「金融機関借入」です。
金融機関で借入をする際には、必ず自己資金がある程度必要になります。
金融機関借入については、起業時に利用しやすい政策金融公庫や制度融資などがおススメです。
また、独自性の強い商品や公益性の強いサービスを提供する場合には、クラウドファンディングを検討してもいいかもしれません。
クラウドファンディングは資金調達をすると同時に、出資者が自社のファンになったり、そこから友人知人へ広がるなどの広告宣伝効果が期待できます。
この他に、起業時に利用できる補助金として「地域創造的起業補助金(旧名称:創業補助金)」や「小規模事業者持続化補助金」などがあります。
補助金は通常後払いのため、他に自己資金や借入で初期資金を準備する必要がありますが、基本的に返済の必要がないため損はありません。
ただし、申請したからといって必ず補助されるものではなく、申請書類作成に労力もかかるのでメリットデメリットを加味する必要があります。
資金調達先 | メリット | デメリット |
---|---|---|
自己資金 | 経営権が保持できる 利子等のコストがない | 多額に用意することが難しい 利害関係者が生まれない |
金融機関 (銀行、政策金融公庫など) | 多額に資金調達ができる 利害関係者が生まれる | 審査次第で借入ができないこともある 利子コストが生じる※利子補給がある場合もある |
知人や親族 | 借入や出資が容易 契約次第で利子や配当等のコストがない | 身内との関係性に影響する |
クラウドファンディング | 多額に資金調達できる 投資者が潜在的な顧客になる | 資金調達コストが高い |
ベンチャーキャピタルや個人投資家 | 多額に資金調達できる 利害関係者が生まれる | 経営権が保持できない 上場の可能性がないと利用できない |
補助金・助成金 | 返済不要 | 採択率が低い 入金まで時間がかかる |
まとめ
今回は記事前編ということで、主に起業の計画段階について解説しました。
計画段階までで重要となってくるのは、事業の成否を明確にすることと、起こすべき行動を具体化することです。
ここまででもし、事業成功の見通しが立たないのであれば、起業を一旦保留し計画の練り直しをすることも選択肢になるでしょう。
まずは、入念にシミュレーションし、具体的な起業計画を練ってみてください。
後編では、主に起業前にする組織の体制整備について焦点を当て解説していきます。
後編はこちらをご覧ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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